拙速という言葉がにわかに注目されています。政治の世界で使われると、意外と注目度が上がるんですよね。まるで昔の「忖度」のようです。では「拙速」についてご紹介していきます。
拙速の読み方
拙速の読み方は「せっそく」です。拙速の「拙」なんて学校でも習っていないし、社会に出てからもあまり見ることはないです。
唯一見るのが新聞のプロ野球の記事。そこに「拙攻」「拙守」という言葉が出てくるくらいでしょうか。ちなみにこの2つはそれぞれ、せっこう・せっしゅと読みます。
拙速(せっそく)の意味
拙速の意味をご紹介します。
できはあまり良くないけど、仕事や作業のスピードが早いこと
この意味のとおり、拙速についてはいい意味で使われることと悪い意味で使われることがあります。
いい意味で使われるときは、内容は満点ではないけどスピードが早くていい、ということですね。
逆に悪い意味は、早くても内容が良くないとダメ、という感じです。そんなに慌てなくてもいいじゃないか、という雰囲気も感じます。
つまり発言者が何を求めているかによって、意味が違ってくる言葉と言えます。
締め切りが間近に迫っているとか、ライバルよりも一歩先に進むことを大事にしている人ならプラスの意味。
長期的なプロジェクトや、質を高めるべき仕事に取り組んでいるならマイナスの意味となることが多いです。
「拙速」という言葉が、いい意味なのか悪い意味なのかというところは、発言者のことを知らないと分からない、ということになります。
ちなみに「拙」自体の意味につたないとか、上手でないとかの意味があります。そもそも拙自体は良くない意味なんですね。
だからこそ上で挙げた「拙攻」「拙守」はまずい攻撃・まずい守備を表します。拙が付いている言葉でプラスの意味も持つのは拙速くらいじゃないでしょうか。
拙速の反対語(対義語)
拙速の対義語をご紹介します。
巧遅(こうち)
拙の反対語の「巧」、速の反対語の「遅」を組み合わせた言葉です。意味は文字通り「上手で質がいいけど、作業や仕事自体は遅い」という意味です。
拙速と同様に、巧遅も発言者によってプラスの意味になったりマイナスの意味になったりします。どちらの意味で使っているのかは、言った人が何を求めているかということから判断していきましょう。
拙速を使ったことわざ
拙速を使ったことわざを調べてみました。しかし見つかったのは1つだけです。それがこちら。
巧遅は拙速に如かず(こうちはせっそくにしかず)
意味は「上手だが遅いよりも、品質はそこそこでも早く仕上がる方がいい」ということです。もともと中国の「孫子」に出てくる言葉です。
戦争のときに兵をどう動かすのがいいか、というところにかかれています。
「作戦はそれほど良くなくてもスピードを上げて決着を付けるほうがいい。巧みな戦術で長期間戦い抜いたのを見たことがない」というところから来ています。
似たような言葉に「兵は神速を尊ぶ(へいはしんそくをたっとぶ)」ということわざもあります。戦争ときは神様のようにスピード重視で行うのが大事、ということわざですね。
変化の早い現代も同じような感じです。高品質の商品が完成したけれども、ブームが過ぎ去っていた、というのでは意味がないです。それなりの品質でも先に出す、ブームに乗せる、ということが大事ですよね。
拙速の使い方・例文
では拙速の使い方や例文をご紹介していきます。まずはとにかくスピードが求められる仕事のときに使う感じの例文です。
- このプロジェクトはスピード重視だ。拙速主義でいこう。
- この問題は重要だから拙速に事を進めて欲しい。
クオリティはある程度犠牲にしてでも速度を上げて取り組むという決意を感じさせます。
次にマイナスの意味を含んだ使い方です。
- その考え方は拙速に過ぎる。もっとよく考えるべきだ。
- 社長はいつも拙速な判断ばっかりなんだよなぁ。
あまり考えずに動いたり判断したりすることに対する非難の意味が込められています。
拙速なんていう言葉が世間に出てくるとは!
拙速という言葉がまさか世間でも知られるようになるとは思いませんでした。
昔からある言葉ですけど、新しく世間に登場してきた、という感じがあります。古くて新しい。こういうことがあるから、言葉っておもしろいんですよね。「拙速」という言葉もぜひ使ってみてください!