「勝利をおさめる」「写真におさめる」「国をおさめる」——どの漢字を使えばいいのか、迷った経験はありませんか?
おさめるの漢字は主に4種類(収める・納める・治める・修める)もあって、なかなかややこしいんですよね。
でも、大丈夫です!
この記事では、よく迷うフレーズ別の漢字一覧(早見表)と、4つの漢字の意味や違い、「おさまる」の使い分けをご紹介します。
「この場合はどれ?」と迷ったら、まず早見表をチェックしてみてください。
フレーズ別 漢字一覧(早見表)
迷いやすいフレーズの正解を一覧にしました。
文化庁「『異字同訓』の漢字の使い分け例」(平成26年・文化審議会国語分科会)の用例などに基づいています。
| フレーズ | 正しい漢字 | ひとこと理由 |
| 勝利を収める | 収める | 良い結果を手に入れる |
| 写真に収める | 収める | 中にきちんと入れる |
| スマホ・カメラ・動画に収める | 収める | 「中に入れる」の現代版 |
| 国を治める | 治める | 統治する |
| 学問・医学・学業を修める | 修める | 学びを身に付ける |
| 税金を納める | 納める | お金をしかるべき所に渡す |
| 剣(刀)を鞘に納める | 納める | きまった所にしまう |
| 矛を収める | 収める | 争いをやめる(収束させる) |
| 成功・成果を収める | 収める | 良い結果を得る(文化庁の用例) |
| 注文の品を納める | 納める | 納品する(文化庁の用例) |
| 仕事納め | 納め | 終わりにする |
| 領地を治める | 治める | 統治する(文化庁の用例) |
| 目に収める | 収める | 視界の中に入れる |
| 胸に納める | 納める | 心の中にとどめる(文化庁の用例) |
| 丸く収まる | 収まる | 穏やかに収束する(文化庁の用例) |
| 時間内・予算内に収める | 収める | 範囲の中に入れる |
| 会費・月謝・家賃を納める | 納める | お金はしかるべき所へ |
迷ったときは、この公式だけ覚えておけばOKです。
結果や「中に入れる」=収める、金品や納品=納める、統治=治める、学び=修める
それでは、特に迷いやすいフレーズから順番に見ていきましょう!
「勝利をおさめる」「成功をおさめる」はどの漢字?
正解は「収める」です。
文化庁の使い分け例にも「成功を収める」「効果を収める」という用例が載っています。
良い結果を「自分の手の中に入れる」イメージで覚えると分かりやすいですよ。
例文はこちら。
- 決勝戦で勝利を収める
- 新規事業が大きな成功を収める
- 期待以上の成果を収める
「写真・スマホ・動画におさめる」はどの漢字?
こちらも「収める」が正解です。
「中にきちんと入れる」という収めるの意味そのままで、写真というフレームの中に入れるイメージですね。
スマホや動画、カメラも同じ考え方でOKです。
例文で確認してみましょう。
- 満開の桜を写真に収める
- 子どもの晴れ姿をスマホの動画に収める
- 絶景をカメラに収める
ちなみに「目におさめる」も、視界の中に入れるイメージで収めるです。
一方、「胸におさめる」は胸に納めると書きます(文化庁の用例)。
こちらは「中に入れる」ではなく、「心の中にとどめて外に出さない」という意味だからです。
「国をおさめる」「学問をおさめる」はどの漢字?
「国をおさめる」は「治める」、「学問をおさめる」は「修める」です。
治めるは政治の「治」、つまり統治するという意味。
修めるは修学旅行や研修の「修」で、学びを身に付けるという意味です。
- 王が国を治める/殿様が領地を治める
- 大学で医学を修める/学業を修める
文化庁の用例でも「領地を治める」「学を修める」「ラテン語を修める」となっています。
「税金・会費をおさめる」お金関連はどの漢字?
お金関連は基本的に「納める」一択です。
納税の「納」ですね。
お金をしかるべき所に渡す、というときはすべて納めるです。
税金・会費・月謝・家賃・授業料、ぜんぶ納めるでOK。
- 期限までに税金を納める
- 毎月の会費を納める
「代金をおさめる」も、業者などにお金を支払う意味なら納めるです。
「剣をおさめる」「矛をおさめる」はどの漢字?
ここが一番の難問かもしれません。
実は、剣(刀)を鞘に「納める」、矛を「収める」と、同じ武器なのに漢字が分かれます。
刀を鞘に納めるのは、鞘という「きまった所にしまう」から納める(辞書の用例にもある表記です)。
一方「矛を収める」は慣用句で、争いや攻撃をやめるという意味(デジタル大辞泉)。
「争いが収まる」と同じ、収束の収めるというわけです。
- 侍が刀を鞘に納める(物としてしまう)
- 双方が矛を収める(争いをやめる)
「怒りの矛をおさめる」のような比喩でも収めると書きます。
4つの漢字の意味と違いを整理
それでは、4つの漢字それぞれの意味と違いを整理していきましょう。
納める:金品を渡す・しまう・終わりにする

- 品物やお金を受取人に渡す
- きまった所にしまう
- 終わりにする
納税・納品・納入の「納」です。
しかるべき所、あるべき所に入れて落ち着かせるのが納めるのイメージ。
「終わりにする」の意味では、仕事納め・歌い納め・見納めのように使われます。
年末や卒業式の後に行われる納会にも、1年や学校を終わりにする、という意味が込められています。
収める:中に入れる・手に入れる・収束する

- 中にきちんと入れる。しまう
- 手に入れる。良い結果を得る
- 混乱がしずまる。収束する
収納・収穫・収集の「収」です。
釣り竿をケースに収める、タンスに冬服が収まった、というときはこの収める。
勝利を収める・成功を収めるも、「良い結果を我が手に!」というイメージで収めるです。
争いが収まる・丸く収まるのような「収束」の意味もあります。
治める:しずめる・統治する

- しずめる。おだやかにする
- 政治を行う。支配する
治安・治水の「治」であり、政治・統治の「治」です。
暴れ狂う川の流れをしずめるのが治水、国や領地をおだやかに保つのが統治ですね。
痛みが治まる・咳が治まるのように、体の不調がしずまるときにも使われます。
修める:身に付ける・行いを正す

- 学問や芸術、技術を身に付ける
- 心や行いを正しくする
修学旅行・修了証書・研修の「修」です。
学業を身に付ける旅だからこそ、「修学旅行」に修の文字が入っているのでしょう。
「心や行いを正しくする」という意味では、身を修める、のように使われます。
修行にも修が使われていますね。
【用語コラム】「同音異義語」ではなく「同訓異字」
収める・納める・治める・修めるのような言葉は、「同音異義語」と呼ばれがちです。
ですが、正確には「同訓異字(異字同訓)」と言います。
同音異義語は「機会と機械」のように、音読みが同じで意味が違う言葉のこと。
一方、同訓異字は「おさめる」のように訓読みが同じで、漢字を書き分ける言葉のことです。
文化庁の資料のタイトルが「異字同訓」なのも、これが理由ですね。
【実用ワザ】言い換えれば迷わない!
漢字に迷ったら、別の言葉に言い換えてみるのもオススメです。
| 収める | しまう・手に入れる |
| 納める | 納入する・納品する |
| 治める | 統治する・鎮める |
| 修める | 習得する・身に付ける |
たとえば「税金をおさめる」は「納入する」と言い換えられるので納める。
言い換えても文が成り立つかどうかで、正解の漢字が見えてきますよ。
「おさまる」の使い分けは?(痛みがおさまる・騒ぎがおさまる)
自動詞の「おさまる」も、考え方は「おさめる」と全く同じです。
- 痛みが治まる・咳が治まる(体の不調がしずまる)
- 騒ぎが収まる・争いが収まる(混乱が収束する)
- 箱に収まる・タンスに収まる(中に入る)
- 国庫に納まる・社長の椅子に納まる(あるべき所に落ち着く)
- 身持ちが修まらない(品行を正す、の否定形)
痛みや咳が「治まる」は、病気を治す(なおす)の治と考えれば覚えやすいですね。
ちなみに、仲直りの慣用句「元の鞘(さや)におさまる」は、辞書では「元の鞘に収まる」の表記です。
刀を鞘に「納める」なのに、慣用句になると「収まる」。
「元の関係にきちんと落ち着く(収束する)」という意味だからでしょうね。
ややこしい!
なお「怒りがおさまる」は、収まる・治まるの両方が使われます。
高ぶった感情がしずまると考えれば治まる、感情の乱れが収束すると考えれば収まる、どちらの解釈もできるためです。
【建築コラム】建築用語の「納まり」
建築業界では、部材同士の取り合いや仕上がり具合のことを「納まり」と書くのが一般的です。
「納まりが良い」「納まり図」のように使われ、あるべき所にきちんと落ち着く「納」のイメージそのままですね。
「収まり」と書かれることもありますが、業界の慣行としては「納まり」が主流です。
その他のおさめる
4種類以外にも、おさめると読む漢字はあります。
- 蔵める:しまい込む(蔵の中にしまうイメージ)
- 統める:ひとつにまとめる(天下統一の統)
どちらも日常生活で使うことはほとんどありません。
話のネタとして知っておくと良いかも、というレベルですね。
まとめ:迷ったら早見表をチェック!
おさめるの使い分け、いかがでしたか?
最後にもう一度、覚え方をまとめておきます。
- 良い結果・中に入れるなら……勝利を収める、写真に収める
- 金品・納品・終わりにするなら……税金を納める、仕事納め
- 統治するなら……国を治める
- 学び・品行なら……学問を修める
迷ったら、冒頭のフレーズ別 漢字一覧(早見表)に戻って確認してみてくださいね。
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